腫瘍学講座教授挨拶

弘前大学大学院医学部研究科
放射線腫瘍学講座

教授 青木 昌彦

専 門 放射線治療
資 格 博士(医学)
日本放射線腫瘍学会・日本医学放射線学会放射線治療専門医
日本がん治療認定医機構
がん治療暫定教育医
日本がん治療認定医機構
がん治療認定医
日本医学放射線学会研修指導医

弘前大学大学院医学研究科放射線科学講座は、昭和21年6月22日青森医学専門学校レントゲン科教授として高橋信次先生が赴任されてから70年以上の歴史を誇る伝統ある教室です。高橋信次先生は、人、物、お金のない時代に、X線CTの元祖とも言うべき回転横断X線撮影装置を開発されたほか、高精度放射線治療の基礎となる原体照射法を考案され、文化勲章、日本学士院賞、スウェーデン王立科学アカデミーゴールドメダルなど、数々の賞を受章された世界的にも有名な先生です。私は6代目の教授となりますが、初代教授の高橋信次先生をはじめ、篠崎達世先生、竹川鉦一先生、阿部由直先生、髙井良尋先生が築いてこられた歴史ある教室を更に大きく発展させ、地域医療に貢献することができる医師を育てることが私に課せられた使命であると考えております。

さて、放射線科学講座は、放射線診断学と放射線腫瘍学(放射線治療学)の2本の柱より成り立っています。放射線診断学は、X線CT、MRI、PETなどの医療機器を使って病気の診断を行う医学の専門分野であり、画像ガイド下で細いカテーテルなどを用いて診断と治療を行うインターベンショナルラジオロジー(IVR)もこれに含まれます。放射線腫瘍学は、悪性腫瘍などに対する放射線治療を研究する専門分野で、放射線治療には直線加速器を用いる外部照射、密封された小線源を用いる腔内照射や組織内照射、放射性同位元素を用いる内照射などがあります。近年、質の高い画像診断技術を基盤に、集学的治療の進歩や、強度変調照射法や定位放射線照射法などをはじめとする放射線治療技術の進歩により、早期肺癌、前立腺癌、頭頸部癌、食道癌、子宮頸癌など多くの癌で治癒率が向上していることから、放射線治療を選択される患者さんも増加しております。
放射線診断学も放射線腫瘍学も、放射線を使った専門的な医療を行うこと、および全身の疾患を対象とすることから、放射線診断医も放射線治療医もジェネラルなスペシャリストと言えますが、近い将来、放射線科学講座は、放射線診断学講座と放射線腫瘍学講座に分離・独立し、お互いが密接に連携して専門性を発揮することが理想的であると考えております。

研究面に関しては、放射線科学は研究分野としての裾野が極めて広く、研究テーマには事欠きません。放射線生物学研究、医学利用のため放射線物理学的研究、様々な診断手法に関する開発研究、臨床放射線腫瘍学的研究、新しい放射線治療技術開発研究等々、当研究室では種々の研究に取り組んでおります。すなわち、医学生、研修医の先生方の学問的興味に答えうる多くの領域が放射線科学の中にはあります。更に、科学研究費を獲得した研究も数多く有り、放射線科学分野で過去5年間に科研費を獲得した上位10機関に当教室はランクインしております。

弘前大学医学部附属病院放射線科では、ここ数年、放射線科専門医を目指す後期研修医が増えており、平均年齢がかなり下がりました。女性の放射線科医も増えており、アットホームな雰囲気の中で、最先端医療機器を用いた最高レベルの放射線診療を行うべく、日々、研鑽を積んでおります。多数の放射線診断専門医と放射線治療専門医が在籍し、症例数も多いことから、若手の先生にとっては、充分な専門教育に基づく豊富な経験を積むことができる場であると確信しております。また、県内外の関連病院とも連携し、新専門医制度に基づく高度で充実した放射線科専門研修プログラムを平成29年度に整備しました。放射線診断、放射線治療とも、放射線科学に関する知識と技術は、将来、どの診療科に進んでも役に立つことばかりですので、少しでも多くの医学生、研修医の先生に放射線科の面白さを感じて欲しいと思っております。常に門戸は開けておりますので、気軽に見学にお越しください。

弘前大学大学院医学研究科および医学部附属病院は青森県の医療の中心であり、上記のごとく質の高い診療、研究、教育を提供することが大学の使命であります。放射線科の構成員は、そのための高い意識と使命感を持ちながら日々の業務を遂行して参ります。また、放射線科は、診療において中央診療部門である放射線部とともに、ほとんどすべての各診療科/講座と深く関わっており、研究面では多くの基礎医学講座との共同研究が必要となってきます。各講座との連携を密にしながら、より高いレベルの放射線科・放射線学講座を作り、各関連病院との良好な連携を保ちながら地域医療への貢献も果たして参ります。